【能登の海藻】食えるかどうかで海を見る 

能登観光ガイド


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能登の人の自然への興味は実にシンプル、食えるかどうか
能登では山菜採りを楽しむように海藻を採って食べています。「里海」というのは食えるかどうかのフィールターをかけた海の風景のこと…かな?
だから散歩したりのぞき込んだりそわそわしながら毎日海を見ているのです。
(以下、スケッチの書き起こしです。)

いわのり採り

「ノリ島」はコンクリートを打って岩礁の一部を平らにした所。冬にいわのりを採集するが一般人立ち入り禁止
ウップルイノリ いわのり 冬~2月
奥能登のいわのりはほとんどこれ。
いわのり干し 天日で干して板のりにする
ハバノリ はばのり 冬~3月
やや硬め 同じく天日干しする。
ウスバアオノリ あおさ 早春~5月
葉の元が細くなる

かじめ拾い

海が時化た後、浜辺に上がったかじめを拾って歩く地元の人。棒を使って引き寄せるのが通。かじめはとろーりとしてコリコリとろとろの食感。
ツルアラメ(日本固有種)かじめ 冬~5月
ロメ  かじめ  冬~5月 
どちらもよく似ていて区別されずかじめと呼ばれる。太平洋側のカジメとは別。
生を千切りにするととろみが強い。熱湯で緑変。苦味がある。
根の形で見分ける。
ワカメは芽株(根元)、茎わかめ(茎の部分)、わかめ(葉の部分)から成る。

ガラモ場

能登は藻場面積が広い。ガラモ場(ホンダワラ科主体)は日本一の規模だ。海藻の長さが10メートルもある海の中の森。海の生き物のゆりかごとなる。切れて打ちあがったものが上質。
アカモク はなまつも ぎばさ 冬~5月 食感トロトロプチッ
「気泡」が浮いて体を支える 「生殖器床」もある。
ホンダワラ じんばそう 冬~5月 食感シャキシャキコリコリ
やわらかくておいしいのはこの2種で地方名混在。他にもヨレモク・ジョロモク・ヤナギモク・ヤツマタモクなどが混在する。

もずく

モズク 絹もずく 早春 
海藻に生える。細めで粘る。
イシモズク 岩もずく 梅雨~夏
石に生えるモズク。転石に生える姿は毛髪のよう。真水で洗うと粘りが出る。夏が旬の海藻。
ちなみにスーパーのは沖縄もずく。太い。

海藻の食文化

磯の香を楽しむなら「いわのり」「あおさ」のみそ汁
とろみを楽しむなら「かじめ」の粕汁
歯ごたえを楽しむなら「ぎばさ」「アカモク」のとろろ飯 たたくと粘る
のどごしを楽しむなら「もずく」もずく酢 ツルッコリッ

採る拾う➡洗う➡生のまま➡食べる
採る拾う➡洗う➡湯通し➡食べる
採る拾う➡すのこ➡ 干す➡板のり
採る拾う➡吊るす➡ 干す➡ぎばさ
採る拾う➡ひとつまみ➡干す➡ぼだのり
採る拾う➡塩蔵➡塩抜き➡食べる
採る拾う➡冷凍*超おススメ鮮度保持バツグン!

ごはんにのせる・ふりかけ・みそ汁・粕汁
おひたし・酢のもの・みそ和え・酢じょうゆ和え
煮物・鍋・炒めもの・天ぷら・つくだ煮

【編集後記】
能登に限らず地方の人の自然への興味は、食えるか食えないか。その一点において観察が具体的でとても詳しい。自然の中から食べ物を見つけだして口に入れるまでの情報体系を個々人がそれぞれアップデートしています。これが自然に対する人間の正しい姿勢だと学んだ思いです。
都会人は地球温暖化や環境問題はつらつら語れるのに浜辺のどの貝が食べられるか全く知りません。根本的な無知を自覚しゼロから自然に学ぶ姿勢になった方が『不都合な真実』を読むより地球のためです。きっと。

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