実は能登半島は北アルプスの展望台です。海の上に浮かぶ山脈としては日本で一番の景色でしょう。空気が澄んだ日限定の絶景でいつでも見えるわけではないことも感動を深めます。
見えるのは北アルプスの立山連峰と後立山連峰を中心とした幅100㎞の山脈です。左を頚城山塊(妙高火山群)、右を薬師岳が押さえます。
能登半島は奥行が80㎞以上あるので眺める場所によって角度が変わり、見える山も少しずつ違うので山名を同定する楽しみがあります。
また半島側には海上アルプスと組み合わせる素材も豊富なのできっと写真を何十枚も撮ってしまうことでしょう。
能登半島の南部・中央部・奥部の順に紹介します。
能登半島 南部(富山県)
立山連峰(毛勝三山・剱岳・立山三山・薬師岳)が近くて大きく見えます。いくつか小島があってそれぞれの島と北アルプスを組み合わせた写真が定番です。
①雨晴海岸の女岩(高岡市)
【富山湾越しに見える立山】として最も有名なポイントです。「道の駅雨晴」からすぐ海岸に下りれば女岩の向こうに迫力のある毛勝三山が重なります。そう、それは立山ではありません!
剱岳や立山はもっと右。富山市街の上にかぶっていて海の上にはありません。弥陀ヶ原までわかるくらいに近いのですが、残念ながらここは富山湾のどんづまりなので堤防・港湾設備・工業地帯などが見え、やや興ざめです。
そこで朗報、剱岳が女岩と重なるポイントがあります。海岸沿いに少し離れた氷見線雨晴駅の方まで下がり、整備された岩礁に出てみれば手前に渚、奥に剱岳が重なります。
剱岳は迫力満点。が、隣の立山はというと実は奥大日山。立山三山がその陰に隠れていることを双眼鏡で確認しました。
左側の白馬連峰は手前の山が張り出しすぎて稜線部がわずかしかみえていません。
このように雨晴海岸は立山連峰が大きい他は減点が多く私としては低評価。ここが有名なのは島を伴った立山連峰が見える場所として富山市街から一番近い利便性と、能登半島の他の場所を知らぬがゆえでしょう。
②氷見漁港の唐島(氷見市)
寒ブリで有名な氷見。漁港そばに唐島があります。「道の駅氷見」から海岸線一帯が広い公園になっていて散歩しながら楽しめるよい眺望地です。ここからも湾奥の富山市街や港湾設備がまだ目に入りますが、雨晴海岸よりは海に浮かんでいる感じがします。
③R160の海岸線
半島にそって七尾に抜けるR160からは海上アルプスがよく見えます。特に白銀の峰を正面にとらえて南下するコースだと進行方向に重なり思わず声が漏れてしまうほど壮麗です。
④氷見市中田の虻が島(氷見市)
中田からの海上アルプスの眺望は虻ヶ島が宍道湖の嫁ヶ島を連想させる美景です。少し距離が離れた分、稜線がハッキリし、富山湾も対岸が見えず、これ以北は文字通り【海に浮かぶ北アルプス】となります。
特に立山連峰を主とするならここが一番いいと思います。後立山連峰の方も鹿島槍ヶ岳や五竜岳が見えてきます。富山県では最高の海上アルプス撮影ポイントでしょう。おすすめします。
⑤大泊の仏島(七尾市)
残念なのが仏島。せっかくの美景が消波ブロックで台無しです。 立山連峰と仏島が重なる位置を探すとどうしても積み増しされた消波ブロックが邪魔をします。
消波ブロックが写らない場所まで行くと白馬連峰と仏島が重なる位置になります。
仏島は浜に近いので被写体としてはおもしろく、鵜が休んでいるのも見えます。
能登半島 中部(七尾市・穴水町)
能登島の東海岸は海上アルプスのベストポイントです。立山連峰と白馬連峰が等しく、大きく見え、海上アルプスの面目躍如。
一方でR249が海岸線をなめる能登半島側からは能登島がブロックして海に浮かびませんが、そのぶん七尾湾と能登島が織りなす変化に富んだ姿に遭遇します。
⑥能登島東岸(七尾市野崎)
富山湾に面した野崎には小さな島があって歩いて渡れます。付け根には野崎キャンプ場があり、前景の素材には事欠きません。
このあたりは均整の取れた海上アルプスになります。
立山連峰はゴツゴツして男性的です。
白馬連峰はなだらかで女性的。ハッキリとしたふたつの個性の山脈が等しく並び立つ絶景。すばらしい。
⑦ツインブリッジから(七尾市中島)
雲のように見えますが、奥に北アルプスが覗いています。七尾西湾の奥に能登島と能登半島を結ぶ【能登島大橋】が見えます。撮影している所は能登島を結ぶもうひとつの橋【ツインブリッジのと】の上です。
【ツインブリッジのと】は吊り橋です。雲に紛れた立山連峰が橋と重なります。
⑧七尾北湾から(穴水町)
能登島の向こうに北アルプス(主に白馬連峰)を望む夕景。凍てついた海とボラ待ち櫓(実物大復元)。冬はめったに見えないが、現れた時には白い壁のようで美しい。
能登半島 奥部(能登町・珠洲市)
白馬連峰(朝日岳・雪倉岳・白馬岳・旭岳・杓子岳・白馬槍ケ岳・唐松岳)や頚城山塊が大きく見えてきます。ここまで来ると立山連峰よりも白馬連峰の分厚いボリュームが圧倒的で主役交代です。また白馬連峰の右側には五竜岳・鹿島槍ヶ岳・爺ヶ岳と続く稜線がのびやかな全貌を現します。おもしろいのはそれが長野県側からとは逆並びなこと。山好きにはピンときますね。
⑨能登町(波並)
大洋に浮かぶ北アルプスはまるで島かと見まごうばかり。双眼鏡があれば見飽きることがありません。能登町の海沿いはさえぎるものは何もなく、国道246号線や県道35号線ならどこからでも【北アルプス展望所】と化します。
北アルプス主要部。左が白馬連峰、左が立山連峰、それをつなぐ後立山連峰(左から五竜岳、鹿島槍ヶ岳、爺ヶ岳)。私の一番のお気に入りです。
ここからの山名同定はこちら→ https://murabitovision.net/northern-alps-on-the-sea/
➉能登町(小木)
海上アルプスは晴れた日ばかりとは限りません。南風が入って乾燥するフェーン現象の日や空気が澄んだ冬なら曇りでも出現します。「立山が見えたら次の日は雨」とも。
のと海洋ふれあいセンターから海に下りると海の上を歩くような遊歩道があります。小さな岬を一周しながら臨む海上アルプスは楽しい思い出と共に記憶に残ることでしょう。
⑪珠洲市
能登半島の先端からの展望は白馬連峰を中心に頚城山塊が大きくなり、立山連峰は小さくなります。もはや通称だとしても「立山が見える」と言うにはふさわしくありません。
頚城山塊(妙高連峰・戸隠連峰)は北アルプスに比べれば一段低いですが、個性的な山が集まるひとつの巨大火山のようです。盟主・妙高山を隠す新潟焼山は現役の活火山。右翼に雨飾山を配します。
ちなみに新潟県の糸魚川河口からみた頚城山塊の姿です。能登からは優美ですがそばで見るとすごい迫力です。
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