【移住ライダーの日常】能登に行きたくなる!

バイク・ツーリング

地方に住むことがバラ色の人生というわけではありませんが、旅するライダー(の資質がある人)ならば検討する価値のある選択肢です。観光地とされている能登でオートバイのある日常とはどんなものか、ライダー目線でレポートします。

通勤ツーリング(平日)

自宅から事務所まで片道20キロ。通勤だけどツーリングに値する田園を50~60km/hで淡々と走り抜ける。季節の風景や匂い・エンジンの鼓動・スピードの余韻・そして早朝の気温が体感として残り、一篇の映画を見たかのようなすがすがしい気分で職場に至る。
完全にリフレッシュして仕事に入ることができ効果絶大。バイクツーリングの楽しみは週末までがまんしなくていい。仕事と両立できるのが能登流。毎日少しで十分満足。

小鳥のさえずりで目が覚めたら外は青空で爽快。TVの天気予報は夕方まで晴れ。そそくさと準備してちょっと早めに家を出る。輪島経由で事務所に行くと決め、いつもとは反対の道へ進む。50キロ1時間のコースで、朝ツーキンが朝ツーリングになってしまったの図。

寄り道もまた楽し

帰り道に大回りして海沿いを走る。お気に入りのベーカリー【能登パン】に立ち寄ることにした。
パンを選びながら窓の外に目をやると、夕日がスポットライトのように3000メートル級の山脈を照らしている。海に浮かぶ北アルプスは絶景だ。
『僕はその頃よく、海沿いのパン屋でバタールを買っていた。夕暮れにバイクで走る言い訳にしては上出来だった。』
片岡義男ならこんな出だしになるのかな。

七夕の月夜に 仕事終えバイクで向かうは 夕食の【ライダーズハウスPEACE
今夜は祭りで町が騒がしいから離れてきたけど、こんな日はちょっと変わったことがあってもいい。料理人にメニューを委ねるのも悪くないなと思い「何かおすすめは?」とサトミさんに聞く。
「もちろん全部おすすめよ。」
と、ややめんどくさいことを言ってきた。めげずに続ける。
「実はカルボナーラが苦手なんで、それ以外なら何がいい?」
「えー、うちのはすごく評判いいよ。ちゃんとイチから作ってあるから。食べてみなよ。」
「そうきたか。そこまで言われちゃ引っ込めないなあ。じゃあ試してみるわ。責任取ってよ。」
それ以来、PEACEではいつもカルボナーラをたのむ。食べたくなるとまた行く。

思い立ったらショートツーリング(休日)

あれやこれや用事も済み、ぽっかり空いた休日の午後。ちょっくら2時間ほど走ってくっか、と軽いノリでジャケットに着替え、交差点でこっちにしよ、あっちにしよっと思いつきで決めていく。こんな無計画でも走り出せば能登のど真ん中、アクセスゼロのいきなりツーリング・クライマックス状態。超充実の走りにプラスして森を散歩したり海を探検したりコーヒーブレイクしたりすれば、もう夕陽になっていた。

家から20分で断崖絶壁。砕ける波をずーっと見ているのが気持ちよくてクセになる。心がザワつくんでボーっとしたいなって時に来る。威圧的な大地には激しい火山活動の記憶と水との戦いが刻まれている。好奇心で歩き回るからライディングシューズは登山靴仕様だ。

家から20分でブナの森を通る道。落ち葉にすべらないように静々と進み、オートバイを止めて森を歩けば初夏には野鳥のさえずり、秋には紅葉を楽しめる。たまに森に抱かれる習慣は気に入っている。

家から20分で海のワインディングロード
『海に身を投げるようなワインディングを欲したのは、太陽のせいだ。』
カミュならなんでも太陽のせいにしそうだ。
すれ違いざまにライダーたちがピースサイン。わたくし地元民なんですけど・・・と思いながらもサインを返して旅人と化す。

ナポレオンフィッシュに見える窓岩。
岩の窓穴に夕日が入る時もあるランドマーク。立ち止まって落陽を眺めている人がいる。気が合いそうだ。私が心ゆくまで夕焼けを楽しむことができるのは、20分で家に着けるから

エリア全体のツーリング偏差値が高くて満ち足りてしまう能登

美景が続く能登の西海岸を輪島・門前・富来・志賀とオートバイで流したが、途中70㎞にわたって前後に車がいなかった
道連れは3000回転のエンジン音と次第に長くなっていく自分の影。美しい時間だった。

なにものにもわずらわされることなく絶景街道をただひとり走る。甘美な瞬間が次から次へと現れては過ぎていく。
立ち止まって考えたい誘惑、記録したいという義務感を抑えながら流れ続ける景色に身を任せきっていると、やがてタイヤが消え、鼓動のようなエンジン音を抱えて地面スレスレを滑空しているような感覚になる。
そんな時、今という瞬間の流れに没入できると、なにもかも美しく見えるゾーンに入る時があって・・・
たまにそうなる。それが楽しみでまた走る。

【異日常】への憧れ

ツーリングライダーの旅の動機は自分の知らない所・自分とは違う世界を見てみたい探求心。
それは若い人だけの特権ではなく、自分の作り上げてきた現実を大切にしている大人にとっても、自分が選ばなかった異なる日常への憧れがあり、それを見聞し体験することで今の自分をリフレッシュするのは同じ心境でしょう。
オートバイと体力を使って地続きでそれを探しに行くところにライダーとしてのおもしろさがあります。肌の合う旅先が見つかれば、ここに住んでみたらどんな感じかなと想像するものです。
そんな妄想を能登で現実にした一端をご紹介しました。

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