NOTO FIELD NOTE illustrated by a.yamazaki 無断転載を禁じます。
4月下旬から5月中旬に能登を訪れると大きな赤い花の木のとキリシマツツジが目につきます。
江戸から全国に広がって一世を風靡し、とうの昔に廃れてしまったキリシマツツジが能登で数百本の古木群として”発見”されました。それは能登人のねばり強さと家族の血脈を示した風土の象徴です。
(以下、スケッチの書き起こしです)
●宮本康一さん(NPOのとキリシマツツジの郷・柳田盆友会)
「自分たちはすごいと思っている。とにかく来てください。」
●倉重裕二先生(新潟県立植物園副園長)
「樹齢百年以上の古木が地域に500株以上ある所は能登以外にありません。日本にないということは世界にもないんです。」
●小林伸雄先生(島根大学生物資源科学部教授)
「能登は農家に1本1本あるという他にないスタイル。なんでこんなに大きいキリシマがこれほどたくさんあるんだとびっくりしました。」
のとキリシマツツジの見分け方
●キリシマツツジは1730年代に伝来した。主なる江戸霧島とけら性に大別できる。
正面(まず2タイプに大別)
江戸霧島 細め 深紅濃い 小さめ 3㎝±α
けら性(品種不明)能登固有? ふくよか朱色薄い 大きめ 4㎝±α
横向き(さらに品種特定)
江戸霧島の一重なら
①本霧島=深紅
⑦紫霧島=紫色 成長が遅い
⑧紅霧島=ピンク めずらしい
江戸霧島の二重なら
②蓑霧島=不完全ガク片
③二順霧島=不完全二重 白い毛
④八重霧島=完全二重 額が花弁化
けら性の一重なら
⑤少ない(ほとんどない)
けら性の二重なら
⑥紅重=ガクが花弁化 ④と似ている
その他
⑨四季咲霧島(秋にも開花する)
●のとキリシマツツジ花期の目安
咲き始めからおしまいまで全体で20日くらい。
適期は14日
見頃は10日
ベストは5日、ベターは前3日、後2日
*地域・日当たり・株の特徴・天候で時期がずれる。
*雨が当たると色がぬける。
●のとキリシマツツジの真価
1.日本一の古木集積地
2.個人宅にあって大きい
3.品種が多い(7種+3系統)
雪吊り雪囲いをする。雪の重みで横に広がった古木が多い。
能登には代送りして守っている深紅の花がある。
【編集後記】
江戸時代、江戸の染井はたくさんの園芸品種を生み出しました。
九州の霧島からツツジの苗を持ってきてそこで作出された園芸品種が江戸霧島です。大ブームで能登にも渡ってきて植えられました。
しかし園芸品種の宿命かしばらくすると庭師が流行に合わせて植え替えてしまうのが常。しかし他所と違って能登では江戸霧島をだれも引き抜かずに育てたから残りました。そしていま、のとキリシマツツジと呼ばれています。
流行に流されず、ずっとそのままにしておく。実に能登らしい蓄積です。
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